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「にがい涙」スリー・ディグリーズ
テレビに出てくる外人で日本語を話せるのはロイ・ジェームスとデストロイヤーしかいなかった時代に、突然スリー・ディグリーズが日本語で『見てたっ はずよっ…』って。意味の分からない英語の歌詞ならハハンハハンってリズムに乗って洋楽カブレしてればよかったけど、3人揃いのドレスで生々しい日本語で男と女の隙間みたいなところを歌うもんだから、厳格な父親は「こんな番組見ちゃならん!」とチャンネルを変えた。ところが変えられたチャンネルに映し出されたのは『プレイガールQ』だったりして、親父はどうフォローしていいかわからずブチっとテレビの電源を切って二階の寝室へ直行した。消されたブラウン管に走るチチッっという静電気が、彼女たちの余韻を残していた。
「その気にさせないで」キャンディーズ
キャンディーズは意地悪なお姉さんたちだった。『年下の男の子』とか『内気なあいつ』とか、どこまでも僕らを安心させといて、無邪気にお姉さんの部屋をのぞいたら、ドアの隙間からどこか苦みの混ざったコロンの香りが僕の鼻に木霊した。制服を脱いだお姉さんは僕の手の届かないところに行ってしまうんだ。だったらせめて制服を来たままでいて。それがだめなら、その気にさせないで。これ以上僕らの心を揺らすのは、僕らの脳髄をピンク色に染めるのは、お願いやめて!「そんなつもりじゃないの。でも、傷ついたんだったら、ごめん」。ぺこりと下げた髪の匂いがまたまた僕を破壊した、中学生という純情…
「ファンタジー」岩崎宏美
学校帰りの田んぼ道。あのコと夕暮れの中、家路を辿ってる。手をつなぎたいのに、僕の手のひらときたら恥ずかしがってポケットの中でもぞもぞと照れ隠し。勇気を出してサッと彼女の白い手を奪おうとしたら、焦った手のひらがこともあろうに彼女の胸のスカーフにタッチした。「あ、ごめん」「ううん、へいき」。沈黙と静寂の中で僕の心臓とあのコの心臓が蛙の鳴き声よりも大きな声で泣き出した。キスなんて、まだまだ遠いおとぎ話の夢の中。ファンタジーとメルヘンと、そして現実との狭間で揺れる恋心。『恋ってね、苦しくなることの方が多いんだよ』。歌詞の裏側に隠された岩崎宏美のメッセージに、また恋をした。
「セクシー・バス・ストップ」浅野ゆう子
「いつものジュークBOXかけても、あなたはいないのね」。
心はずむラブソングが、今夜はなんだか哀しい雨音に聞こえるのは、やっぱりあなたがいないから?隣では仲のいいアベックたちがボーリングをして愉しそう。羨ましくなんかないよ。だけど…だめだめ、ラブソングで流す涙は幸せな涙って決まってるんだから。よーし、踊りにいこ。ミラーボールの輝きは悲しみを忘れさせてくれるから。「ねぇ、あなたひとりで来てるの?だったら私と踊ろうよ」。カチューシャをしておでこを見せた浅野ゆう子が私の寂しさを笑顔で埋めてくれた。「じゃ、私の役目はここまでね」。背を向けて去って行った浅野ゆう子の後ろには、あなたが笑いながら立っていた。バカっ、もう一回泣いちゃうからっ。
「リップスティック」桜田淳子
淳子20歳。俺16歳。彼女オトナ。俺ガキ。『白い雨に くちべにだけ赤く』。恋の階段をひとつずつ昇っていく彼女の背中は、恋に憧れているだけの俺には遠すぎる。赤、青、黄色。原色しか知らない俺の感情が、彼女の背中を追うことでいろんな色が混ぜられてすこしずつ切なさが彩られていく。紫色や淡いグリーンやはにかんだピンク色は、戸惑いやもどかしさを憶えたせい?いやだ、パステルカラーなんてわからない。どこまでも原色の恋がしたいのに、何色を足したって俺の思いは薄まらねーぞ。俺の叫びが淳子の背中を通り抜け彼女の心の扉をノックした。「バカね、ほら、私のくちべにだって赤いでしょ」。どんどんはまり込んでいく恋の罠に、僕の心は真っ赤っかに染まった。
「バンプ天国」フィンガー5
曲の出足は何回聴いても『東鳩キャラメルコーン』のCMと聴き間違えてしまうが、アキラくんが歌いだしたら急にソウルフルな雰囲気に包まれて。なんてゆーんだろうなぁ、あのリズム。ジャクソン5じゃ醸し出せないフィンガー5ならではの喉に絡みつくような甘ったるさが、通知表の評価の悪さをどっかへ吹き飛ばしてくれた。フィンガー5のリズムって、とても味覚的で、そうそう、あの甘さってバニラアイスの上にプリンのカラメルソースをかけてちょこっとナッツをのっけた感じ。大人になるまでの僅かの時間の中でしか許されなかったチャイルドソウルだったけど、彼らを知ったおかげで学園は天国になった。
「胸さわぎ」優雅
ディスコティックなサウンドを台湾出身の優雅(ゆうや)が歌うことで、どこか不思議な世界観がつくりあげられ、日本歌謡界は未知なる航海をはじめた。後のテレサテンにつながるプロローグは、日本人には匂いたたせることができないアジアレディの哀しみと逞しさを同時に表現した。不安?そりゃあるわよ。だけどずっとここに居るのなら私は旅に出る。空路でもなく陸路でもなく、ただひたすら波に揺られて東へ向かうの。楽しいだけの恋なんていらない。どんなに苦しくたって私の恋心だけは私を裏切らないから平気なの。信じることで自分を強く持とうとする健気なキミだけど、本当は海よりも優しいコだっていうこと知ってるよ。
「いい娘に逢ったらドキッ」伊藤咲子
伊藤咲子の歌唱力がありすぎて、せつない思いが高速回転で元気な応援歌になってしまったというミラクルな曲。誰もが恋する気持ちの切なさを歌に求めていたときに、まるでジュリー・アンドリュースのように「ドレミファソラシド」って魔法をかけてフォークダンスの世界へと導いたことは恋のノーベル賞に値する。ただ伊藤咲子の歌ってるシーンがどうしても『スター誕生!』の生放送が行われていた渋谷公会堂の客席の一番後ろの扉の前という印象しかなくて本当にごめんなさい。そしてもうひとつ。伊藤咲子と初代コメットさんの見分けがつかなかったのは僕だけでしょうか?
「ディスコナイツジャパン」(SME)
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